無電柱化(電線類地中化)とは?メリット・デメリットを解説!

人と社会2024.06.26

この記事について

街中にたくさんある電柱。
実は、電柱がないところもあるのを知っていますか?


「じゃあ一体、電柱はどこにあるの?」「どうやって電気を運ぶの?」と、不思議に感じる人も多いのではないでしょうか。
電線を地中に埋設するなどして地上の電柱をなくすことを、無電柱化(電線類地中化)と呼ぶんですよ。


今回は、無電柱化(電線類地中化)についてお話しします。
今、日本ではどのような状況なのかや、無電柱化のメリットやデメリットもご紹介します。

このコラムは、私が監修しました!

北海道科学大学 工学部 都市環境学科

教授石田 眞二Ishida Shinji都市計画学 交通計画学

私の研究分野は、都市計画と交通計画です。
私は大学を卒業して、7年間ほど設計コンサルタントの仕事をしていました。その当時に担当していたのが電線共同溝の設計でした。つまり、このコラムにある無電柱化の設計を実際に取り組んでいました。
その当時の経験を活かし、無電柱化が実現した街並みの道路景観の定量的評価手法の確立等にも積極的に取り組んできました。街を美しくする手法として、電線類の地中化は効果的です。
都市環境学科では、2年生からCADの操作方法を習得し、4年生では、電線共同溝の設計を実務レベルの図面を活用しておこないます。特に線形設計や断面線形では、他の地下埋設物の支障にならないように図面を描いていきます。
「大切なものは目には見えない」とよく言われておりますが、私たちの生活を支えるライフラインも地中化により目には見えなくなります。でも、とても大切なインフラ整備の一つであることを実感しています。

無電柱化(電線地中化)とは?

無電柱化(電線類地中化)とは、電柱をなくし、地中に電線類を通すことです。
のちほど触れますが、無電柱化にはさまざまなメリットがあることから、日本も無電柱化を推進しています。

国が無電柱化を進める目的として、「良好な景観を形成すること」「通行空間の安全性と快適性を確保すること」「大規模災害の発生時に倒壊による道路の寸断を防ぐこと」が挙げられます。

実は世界では無電柱化はスタンダードとなっており、ロンドン、パリ、香港、シンガポールでは無電柱化100%、つまり、電柱は1本も立っていません。
また、台北(タイペイ)は96%となっています。(いずれもケーブル延長ベース)
※ケーブル延長ベース:全電線のうち地中線の占める割合を電線の設備量を用いて算出する方法

ここで日本の状況はというと、東京23区で約48%、大阪市で約46%(ケーブル道路延長ベース・2018年度末時点の調査による)です。
いかに、日本の無電柱化が進んでいないかがわかるでしょう。

追い打ちをかけるかのように、日本では新たな電柱も増え続けており、その数は毎年数万本ともいわれています。

無電柱化が進まない原因は、主にコストが高いことと工事が長期化しやすいことの2つ。
そのほか、土地の管理者が複数いるなどで許可が下りにくいこと、電線引込線の位置の確定が難しく効率化が悪いこと、配電線の距離が長くなってしまうことなどが挙げられます。

無電柱化(電線類地中化)のメリット・デメリット

傾く電柱

無電柱化(電線類地中化)にすることで得られるメリットと、無電柱化によるデメリットをご紹介します。

メリット①景観が良い

電柱が乱立し、電線が張り巡らされている風景は、美しい景観とはいえません。

特に、歴史的な町並みをもつエリアや、有名な建造物があるエリアでは、電柱がないほうが空が広く見え、開放感のある美しい景観が形成できます。
加えて、景観が良いことは観光資源にもなり、地域の活性化につながります。

無電柱化が進んでいるエリアは、地価(土地の値段)も高い傾向にあります。

メリット②より安全・より快適に通行できる

電柱がないことで通路のスペース(有効幅員)が広くとれるようになり、より安全で快適に通行できるようになります。

ベビーカーや車イスの方も、電柱がないほうが円滑な移動が可能になります。
バリアフリーの観点からも、車いすのすれ違いでは有効幅員2mは必要になります。
この幅を確保するためにも無電柱化は有効です。

電柱を避けようとして道路側に歩行者がはみ出てしまうと、車と接触するおそれがあり、たいへん危険です。

メリット③災害時の安全性が守られる

電柱が地中にあることで、地震や津波、台風などの大規模災害時の倒壊を防ぐことができます。

電柱は、災害時に1本でも道路上に倒壊してしまうと交通が遮断され、緊急車両の通行や物資の輸送ができなくなり、救助活動や復旧活動を妨げ、被害もより大きくなってしまいます。
また、断線による停電や、電線が垂れ下がることから派生する感電など、二次災害の危険も考えられます。

無電柱化が進めば、このような災害時のリスクを減らすことができるでしょう。

デメリット①コストがかかる

無電柱化の実現には、電線類を地中化する工事が必要で高いコストがかかります。

また、地中の電線はメンテナンスも難しく、こちらもコストがかかってしまうのがデメリットです。
そのため、国は低コスト化に向けた技術開発なども行なっています。

デメリット②トラブル時の復旧に時間がかかる

トラブルが発生した場合、場所の特定に時間がかかるおそれがあります。
また、復旧自体も時間がかかるため、ライフラインがなかなか元に戻らない可能性があります。

無電柱化(電線類地中化)はデメリットもあるがメリットが大きい!

無電柱化(電線類地中化)とは、電柱を立てずに電線類を地中に通す状態のこと。
世界の都市では無電柱化100%を達成しているところもあります。

日本の場合は東京23区においても、ケーブル延長ベースで無電柱化は48%と、ヨーロッパやアジアの主要都市と比べると進んでいないのが実状です。

無電柱化することで、良好な景観を保てる、安全で快適に通行できる、万が一の災害時にも安全性が高いなどメリットがたくさんあります。

ただ、設置工事やメンテナンスのコストが高いのがデメリットで、それが日本の無電柱化を阻む主な原因にもなっています。

とはいえ、非常に魅力的なメリットがある無電柱化。
安全で快適なまちづくりのためにも、ぜひ進めたいものです。

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