AI(人工知能)とは?歴史や仕組みまでわかりやすく解説!
この記事について
AIを一言で表すと「人工知能」なのですが、具体的にどのような知能が備わっているのか、どのように進化してきたのか、という点において詳しい人は少ないかもしれません。
AIは現代社会において大きな注目を集めており、その歴史の中には現在のAIの基盤となる技術が多く存在します。
過去から現在までの歴史について知ることで、今後のAIの進化についても理解が深まるでしょう。
今回はAIがどのようなものなのか、わかりやすく解説すると共に、現在までの歴史についてもご紹介します!
AIの進化の歴史を追いながら、AIの仕組みや、AIが現代社会でどのように活用されているかを確認していきましょう
このコラムは、私が監修しました!
准教授大江 亮介Oe Ryosuke
毎年ゼミに所属している学生さんの卒業研究を指導しています。皆さんいろいろなテーマで卒業研究に取り組んでいますが、やはり何かしらの形でAIを利用したものが多いです。
例えば、人の顔の状態を読み取ったり対象物の位置を判断したりする画像認識、人間らしい文章を生成して返す自然言語処理など、研究目的に応じた様々なAIについて調べてプログラムを作ってくれています。
中には私も知らないAIを使っている学生さんもいて、卒業研究指導を通して私も一緒に勉強させてもらっています。
AIは今後も様々な分野で利用が進むと思われますので、複雑なAIを使いこなしてアイデアを形にした経験が将来役立ってくれるとうれしいですね。
目次
AI(人工知能)とは?まずは基本から解説!
AIの正式名称は「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」。
1956年にアメリカのダートマス大学で「人間の知能を機械によって模倣し、機械が人間のように思考や問題解決を行えるようにする」ための “ダートマス会議” が行われ、この中で「AI」という名称が生まれました。
AIとは、簡単にいうと「人工的に作られた知能」のこと。
学ぶ能力や考える能力、データをコンピュータやロボットに与えることで、人間のように認識・予測・判断・推論・提案などを行えるようになります。
最大の特徴は、自己学習能力を備えていること。
人間が経験を積んで知識を蓄積するように、AIも自ら学習することで知識をさらに広げていくことが可能です。
AIに明確な定義はありませんが、AIの生みの親であるジョン・マッカーシー教授は「人間の脳に近い機能を持ったコンピュータープログラム」「知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と表現しており、世界的な計算機科学者 アーサー・サミュエル氏は「コンピュータに明示的にプログラムすることなく学習する能力を与える研究分野」と話しています。
また、日本においてもさまざまな研究者が定義を語っていますが、一般社団法人 人工知能学会の設立趣意書では「大量の知識データに対して、 高度な推論を的確に行うことを目指したもの」と表現しています。
AIができることとしては、文章の最適化・翻訳、音声認識によるアシスタント、データの分析・予測、自動運転、医療診断の手助け、不正取引の検出などがあり、生活に関わるものからビジネスまで活用の幅は多岐に渡ります。
具体的にどんなものに使われているか、というお話も後ほど詳しくお伝えしていきますね!
AI(人工知能)の現在までの歩みとは?3度のブームと冬時代
AI(人工知能)は、いつ考案されて、どんな案から始まったのか。
現在まで、どう進化を遂げてきたのか、という点も気になりますよね。
AIの基礎となる案は、実は1940年代からありました。
そして3度のAIブームが来るのですが、実はその中で「冬時代」と呼ばれる時期もあったのです。
では、さっそく現在までのAIの進化についてご紹介していきましょう。
1940年代〜:AI考案の始まり
「AI」という言葉は1950年代に入ってからですが、AIの概念は1943年に心理学者のウォルター・ピッツ氏が、人間の神経細胞の働きをコンピュータで再現する機械学習「ニューラルネットワーク」というアイデアを提唱したところから始まりました。
その後、イギリスの数学者アラン・チューリング氏が対象とする機械に「人間のような知能があるか」を判定する「チューリングテスト」というアイデアを考案。
アラン・チューリング氏は、電卓すら作られていない時代に、コンピュータが人間と同じように会話できるようになることを目指し、AI研究の道筋を作り上げました。
当時「いつの日か機械が互いに教え合うようになるかもしれない」と予測もしていたそうです。
なお、「ニューラルネットワーク」は、この後お伝えするAIの仕組みに大きな影響を与えます。
1950年代後半〜1970年代:第一次AIブーム到来
第一次AIブームのきっかけは、「AI」という名称が生まれた1953年の「ダートマス会議」。
研究の中心になったのは「推論」と「探索」です。
「推論」とは人間が既知の知識をもとに思考する過程を記号で表現する試みのことで、「探索」とは、目的達成のために手順や選択肢を調べ、最適な解決策を見つけ出すこと。
具体的にはコンピュータがパズルを解いたり、迷路でゴールするための方法を調べるといった技術です。
そのほか、「エキスパートシステム(専門家のように推論や判断ができるシステム)」「自然言語処理(この時代は翻訳、文章の分類・要約など)」「遺伝的アルゴリズム」などの技術も生まれました。
第一次AIブームのエキスパートシステムでは、1965年に誕生した未知の有機化学物質を特定する「Dendral(デンドラル)」、1972年に誕生した細菌感染の診断を行う「Mycin(マイシン)」が代表的です。
1966年には初の対話型自然言語処理プログラム「ELIZA(イライザ)」が誕生。
ELIZAは、人間の言葉を解析して、その中のキーワードを定型文に組み込んで返答することができ、今のチャットボット(自動会話プログラム)の元祖となっています。
1980年代〜1990年代:第二次AIブーム到来
家庭にもコンピューターが普及したこと、第一次AIブームで登場したエキスパートシステムが各事業で広く活用されたことなどにより、第二次AIブームが到来しました。 1984年には全ての一般常識をコンピューターに取り込み、人工知能に推論を行わせる「Cyc(サイク)プロジェクト」がスタート。
また、日本でも1982年に日本最初のAI研究プロジェクトとして、知識ベースをもとに推論を行う、人工知能型の「第5世代コンピュータ(Fifth Generation Computing Systems:FGCS)」の研究・開発が、政府によって進められました。
2000年代~現在:第三次AIブーム突入
第三次AIブームのきっかけは、大量のデータが利用可能になったことと、それを処理するための高速コンピューターが入手可能になったこと。
「ビッグデータ」と呼ばれる多種多様かつ膨大なデータの記憶や、処理が容易になったことで、AIがデータの規則性を自らが見つけ出して学習する「機械学習」が可能に。
その結果、AIに対する基本の考え方がエキスパートシステムから「機械学習」へ変化し、実用化されていきます。
また、機械学習の一種である「ディープラーニング(深層学習)」の登場により、画像認識、音声認識、自然言語処理などの分野でさらに進化を遂げ、第三次AIブームを加速させました。
最近では「ディープラーニング」を用いたAIとして、「チャットGPT」が話題になっていますね。
この「チャットGPT」は、質問を投げかけると数秒で返答してくれる、アメリカのOpenAI社が開発したAIを使ったチャットボットです。
近年のAIにとって重要な「ディープラーニング」については、後ほど詳しく解説します!
AIの歴史には「冬の時代」も存在した!
実はAIの進化過程では冬の時代(停滞期)も何度かありました。
1970年代〜は迷路やチェスなどの簡単なゲームなどは行えるようになった一方で、現実で発生し得る課題を解決することは難しく、限界が見えたことで冬の時代に突入。
第二次AIブームが訪れるまで、しばらく停滞が続きました。
また、第二次AIブームの後半でも、膨大な情報全てを人の手でコンピューターに理解させることが難しく、活用の知識量が限られてしまったことから、1995年から再び冬の時代へ。
この停滞期も第三次AIブームが始まるまで続きました。
冬の時代を繰り返しながら、現在は史上最大ともいえるAIブームとなっており、「冬の時代はもう来ないのでは?」という声もあるほどです。
AI(人工知能)の仕組みにおいて重要なワード、活用例も解説!
AI(人工知能)とは何か、という点をある程度理解できたら、次はどんな仕組みになっているのかも気になってきますよね。
また、「AIとは?」という疑問を持って検索をすると、難しいワードがたくさん出てきます。
読んでいてわかりづらいと感じるものも多いので、簡単に説明していきますね!
実際のAI活用例についても、あわせてご紹介します。
AIの進化において重要な3つのアルゴリズム
AIの歴史でもお伝えした、進化の基礎となったアルゴリズムについてもお話しします。
ニューラルネットワーク
人間の脳内にある神経回路網を数値モデル化し、データから特徴を学習して分類や予測を行うアルゴリズムです。
例えば人間は何かを見分けるとき、それが何であるかを判断するために、形状や色、匂いなど、さまざまな五感で認識し、脳内のデータベースと照らし合わせて答えを出します。
それと同じように、データを与えることで分析し、それが何かを判断して出力することが可能です。
人間が例題や答えを教えることで、ニューラルネットワーク独自で判断することができるようになります。
具体的には、画像認識、音声認識、翻訳、質問応答、株価予測、クレジットカード不正利用の検出、病気の診断、薬物開発などに活用されています。
遺伝的アルゴリズム
一言でいうと、生物進化のメカニズムを模倣したアルゴリズムです。
問題における、あらゆる解決策を評価して、その中から適した解決策を選択し、さらに優れた最適解を提示することが可能です。
例えば、最適なスケジュールやルートなどを探索したり、作業を効率化させたり、設計において最適な組み合わせを導いて性能を高めたりなど。
ロボットのシステムの制御や進化においても、活用されています。
エキスパートシステム
特定の分野の専門家(エキスパート)が持っている知識や経験をコンピューターに取り込み、活用することで問題を解決するアルゴリズムです。
開発当初は症状から病名を診断するシステムや、株価予測や顧客対応の自動化が中心でしたが、現在は金融業界における詐欺検知やリスク管理、機械の故障予測、車両の設計や安全性の評価などにも応用されています。
また、SiriやGoogle Assistantなど、AIアシスタントの機能でも使われています。
このほかにもAIのアルゴリズムはありますが、1つのみを活用するというより、それぞれの特性を活かし、欠点を補うために複数のアルゴリズムが用いられています。
AIの学習方法「機械学習」「ディープラーニング」
AIの学習方法として「機械学習」「ディープラーニング(深層学習)」というワードをよく見かけると思います。
まず、「機械学習」は機械にデータを学ばせる方法です。
「機械学習」には主に以下の3種類の学習方法があり、AIの種類によって使い分けられたり、複合的に活用されることがあります。
- 強化学習:報酬を得ながら行動を学習し、目標を達成するための最適な方法を自分で選択して行動できるようにする
- 教師あり学習:人間が正解を教えて学習させることで、未知のデータに対して正確に予測できるようにする
- 教師なし学習:自らのアルゴリズムに基づいてデータの構造やパターンを自動的に学習し、自律的に分析・分類・検知などを行えるようにする
一方「ディープラーニング」は機械学習の一種ですが、従来の機械学習より優れた手法です。
多層のニューラルネットワークを利用し、データから特徴を自動的に抽出して問題を解決することができ、ビッグデータを用いて応用的に活用することもできます。
ビッグデータを用いる例としては、病気の原因や治療法の探索、農作物の生産量や品質の向上、交通量の予測や交通渋滞の解消策、商品のマーケティングなど。
話題のチャットGPTにおいても、ディープラーニングの手法を用いることで、高度な文章生成、文章の分類、翻訳、感情分析などができるようになっています。
近年のAIの活用例
AIは近年どのようなものに活用されているのか、いくつかご紹介します。
- 自動運転技術:安全運転支援、運転支援技術、車両・歩行者・物体の認識など
- 音声認識:Siri、Alexa、Google Assistantなど
- 自然言語処理:自動翻訳、チャットGPTなど
- 家庭用ロボット:ロボット掃除機、ペットロボット犬、高齢者ケア用ロボットなど
- 金融業界での株価予測、不正取引検出
- 医療業界での疾患予測、診断支援
- 教育分野でのオンライン学習支援、学習成果の分析
- 製品の品質管理、欠陥の検出
- 広告配信・顧客分析・戦略などのマーケティング
- 農業や工業での生産性向上、効率化
さらに具体的な身近なAIの活用例、今後どのような使われ方に変化していきそうか、という予測については【身近なAI(人工知能)にはどんなものがある?今後の予測も!】でもお伝えしていますので、ぜひ参考にしてくださいね。
AIとは人工的に作られた知能のこと!今後も進化は続く
AIとは「人工的に作られた知能」であり、機械に人間と同じような知能を与える技術のことをいいます。
知能を持つだけでなく、自ら学習し分析や提案などができることも、AIの大きな特徴です。
AIの歴史は、1956年にダートマス会議で初めて「AI」という用語が使われたことから始まります。
その後、エキスパートシステム、自然言語処理、遺伝的アルゴリズムなどの技術が登場。
現在はディープラーニングの技術がさらに進化し、AIの発展がさらに加速しています。
AIの主な学習方法は機械学習(強化学習、教師あり学習、教師なし学習など)。
AIの種類によって使い分けられたり、複合させて活用されています。
近年AIの技術は、医療、自動車、ビジネスなど幅広い分野で活用されており、今後もますます重要性が高まっていくと予想できます。
現在の第三次AIブームは加速の一途ともいわれてるので、どう進化していくか楽しみです。
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