DMATとは?活動内容や任務期間、向いている人について解説!
この記事について
地震や水害、大規模な事故などの現場で医療活動を行っている医療チームの一つに「DMAT(ディーマット)」があります。
DMATは災害が起きた際、すぐに被災地へ向かい、被災者に対して医療行為を行う医療チームです。
しかし、そもそもDMATとはどのような組織なのかわからない方もいることでしょう。
そこで今回は、DMATが作られた経緯や活動内容などについて解説します。
DMATになるための方法についても紹介していますので、興味のある方はぜひ最後までご覧ください!
このコラムは、私が監修しました!
教授石川 幸司Ishikawa Koji臨床看護学 循環器内科学
私は急変対応を効果的に教育するための研究を行っています。どうしても救急場面では経験が少ないと緊張して普段の力を発揮することができない状況があります。
私の研究室では「命を守る現場でもケアする力を」を身に付けることができるような研究に取り組んでいます。
このような生命が危機的な状況では、知識や技術以外にも落ち着いた状態で行動することが求められます。しかし、何度も急変するような場面に遭遇するわけではないため、人によって経験が異なります。
そこで、シミュレーション(模擬環境)で救急場面をリアルに再現し、繰り返し学習することで実践力を高めたり、どのように教育すれば実践力が向上したりするかと検証し、看護師の安全かつ適切な実践力向上にむけて取り組んでいます。
大学教員として勤務しながら、医療機関のDMAT隊員としても登録しており、実際の有事(災害時)には被災地で医療活動を行っています。
目次
DMATとは何か?DMATの歴史や活動内容を紹介!
DMAT(ディーマット)は、大規模災害や多くの傷病者が発生した事故現場での医療行為を担当する医療チーム。
「Disaster Medical Assistance Team」の頭文字をとって名付けられました。
医師1名と看護師2名、業務調整員1名の計4名を1チームとして構成。
主に災害発生直後の災害急性期にて、自衛隊や警察、消防と連携しながら医療活動を行います。
DMATの歴史
DMATが発足されるきっかけとなった出来事は、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災です。
当時は災害発生時における医療体制が確立されておらず、筋肉の圧迫によって蓄積された毒素が全身へ広がる「クラッシュ症候群」の対処法も、現在と比べて認知されていませんでした。
そのため、通常の医療が提供できていれば救えたはずの命が、約500名に上ると報告されています。
阪神・淡路大震災によって浮き彫りとなった課題や教訓を活かすべく、2004年に「東京DMAT」が発足し、翌年の2005年には「日本DMAT」が誕生しました。
2022年4月時点のDMAT指定の医療機関は828機関となっており、隊員数は全国で約15,000人にのぼります。
DMATの活動内容
先述した通り、DMATは1名の医師と2名の看護師、1名の業務調整員の合計4名を1チームとして構成されています。
各職種の主な役割は以下の通りです。
- 医師:医療の提供とメンバーの統括
- 看護師:診療補助や被災者・負傷者のケアなど
- 業務調整員:メンバーの食事や宿泊先の手配、情報の電子入力
活動場所が被災地の場合、傷病者が来院している病院からの情報発信などを行う「病院支援」や、ドクターヘリや救急車での搬送中に診療を行う「域内搬送」などに、DMATが携わります。
広域医療搬送の場合、航空機内にて患者の状態の監視や必要に応じて適切な処置を施すほか、SCUと呼ばれる臨時医療施設にてトリアージ※を行う場合もあります。
※トリアージ:患者の緊急性や重症度に応じて治療の優先度を決めること
災害時以外の仕事
災害などが発生していないときは、DMATは病院などの医療機関にて通常の業務を行います。
一方で、災害発生時を想定した訓練や過去の取り組みを振り返るミーティングなど、今後を見据えた取り組みも定期的に行なっています。
DMATが携わる訓練の種類は、主に以下の通りです。
- 大規模地震医療活動訓練
- 緊急消防援助隊訓練
- 空港航空機事故総合訓練
上記のような訓練に積極的に参加し、災害が発生した際にすぐに行動できるような体制を整えています。
過去にDMATが携わった任務
DMATは、これまでさまざまな任務に携わっており、医療活動に従事してきました。
過去に行なってきた任務を紹介します。
新潟中越沖地震
2007年7月に発生した新潟県中越沖地震では、地震発生から約3時間後に派遣要請を受けて被災地での医療活動や支援を実施しました。
正式な派遣要請が行われる前に、新潟市民病院や県立中央病院などのDMATは自主的に出動を始めていました。
地震が発生してから48時間が経過するまでの間、DMATは救急対応を担当していたほか、拠点である刈羽(かりわ)郡総合病院からの転院搬送などを実施。
活動自体は高い評価を受けましたが、出動要請の遅れなどの課題も浮き彫りとなりました。
東日本大震災
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、全国から約340隊、約1,500人のDMAT隊員が3月11日から3月22日にわたって医療活動を実施。
外傷者が想定よりも少なかったことから、患者の域内搬送や広域医療搬送、病院支援が主な活動でした。
これまでの活動を通して浮き彫りとなった課題をもとに行われた訓練などが震災での活動に活かされ、医療や支援が迅速に行われました。
震災におけるDMATの活動が評価され、体制の一部は標準モデルに採用されました。
ダイヤモンドプリンセス号
2020年の新型コロナウイルスの発生により、横浜に停泊していたダイヤモンドプリンセス号で感染が拡大。
厚生労働省からの要請を受けて、約470名のDMAT隊員が出動しました。
2020年2月20日から3月1日にかけて、船内に滞在している乗客への医療活動や指定医療機関への搬送、乗客の家族への対応を行いました。
災害時とは異なる状況ではあったものの、懸命な活動により関連死の防止に成功。
しかし、症状の重症化を防げなかったことや、物資や支援の遅れといった課題も出る結果となりました。
DMATの任務はどのくらい?任務中の生活は?
DMATの活動は、災害が発生した直後のいわゆる「災害急性期」での活動となるため、約48〜72時間です。
災害の状況によって活動時間などが異なりますが、DMATの活動が終了したあとは、医療救護班に引き継がれます。
DMATの活動が長期間におよぶ場合は、DMATの2次隊、3次隊と追加で派遣するケースも。
任務中は、業務調整員が手配した宿泊施設にて食事や睡眠をとり、医療活動に従事します。状況によっては、病院や施設などの一室に寝泊まりすることもあります。
DMATになるには?向いている人はどんな人?
被災地などで活躍するDMATですが、DMATの隊員になるにはどうすれば良いのでしょうか?
DMATになる方法と向いている人の特徴について解説します。
DMATになる方法
DMATになるための方法は、以下の2段階があります。
- DMAT指定の医療機関で働く
- 研修を受けてDMAT登録者になる
詳しく見ていきましょう。
1.DMAT指定の医療機関で働く
DMATの隊員になるには、まず「DMAT指定医療機関」に勤める必要があります。
DMAT指定医療機関は、災害が発生した場合などにDMAT登録者の派遣に協力する意思を持ち、厚生労働省や都道府県から指定を受けている医療機関です。
2024年1月時点では838機関が指定されています。
なお、指定は5年ごとの更新制です。
DMAT指定医療機関は、災害が発生した際、24時間いつでも災害医療ができる体制を整えている災害拠点病院が望ましいとされています。
災害拠点病院は、基幹災害拠点病院と地域災害拠点病院に大別され、基幹災害拠点病院は、原則として各都道府県に1カ所以上、地域災害拠点病院は二次医療圏ごとに1カ所以上設置されています。
2.研修を受けてDMAT登録者になる
DMAT指定医療機関に勤めてから、研修を受けてDMAT登録者にならなくてはなりません。
DMAT登録者になるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 医療機関からの推薦で「DMAT隊員養成研修」を受講する
- 隊員養成研修の全日程を受講し、DMAT隊員として登録する
DMAT隊員養成研修は4日間にわたって行われ、消防士や自衛官による講義や実技指導、想定訓練といった内容となっています。
DMAT登録者は5年ごとの更新制となっており、5年以内にDMAT技能維持研修を2回以上受講することで更新されます。
DMATに向いている人
DMATには、次のような人が向いているでしょう。
- 救急医療の経験がある人
- 突発的な出動要請に対応できる人
- 臨機応変に対応できる人
- 倫理的配慮ができる人
DMATは、災害発生直後の災害急性期に活動するため、医療体制が十分に整っていない状況でも被災者を救う必要があることから、高度な医療スキルが求められます。
そのため、普段から救急医療に携わっている場合は、DMAT隊員としてもスキルを十分に発揮できるでしょう。
災害はいつ発生するかわからないため、突発的な出動要請に対応できる人もDMATに向いています。
災害の状況によって管轄している都道府県やDMATブロック以外からも派遣要請が出ることもあるため、どのような状況下でも即座に出動できることが求められます。
また、災害現場ではさまざまな事態が想定されます。予想外の事態にも状況に合わせて行動することが求められるため、臨機応変な対応力が必要です。
さらに、被災者の方々や他のDMAT隊員と活動するにあたり、相手の立場に立って思いやりをもち、適切な倫理観をもって活動できる人でなくてはなりません。
DMATとは災害急性期にて医療活動を行う医療チーム
DMATは、大規模な災害やけが人などが多く発生した事故現場などで医療活動を行うことを目的とした医療チームです。
医師や看護師、業務調整員の合計4名でチームが作られ、自衛隊や警察、消防などと連携しながら医療活動を行います。
災害時は病院からの情報発信を行うほか、救急車やドクターヘリを使用しての搬送中に診療を行うなど活動の幅が広い点が特徴です。
DMATの隊員になるには、DMAT指定の医療機関に勤め、研修を受けなくてはなりません。
DMAT隊員として登録後も5年間で更新が必要なため、DMATを目指す場合は事前に必要な情報を集めるようにしましょう。
石川教授がDMATとして活動した際の様子はこちら!
北海道科学大学保健医療学部看護学科で最先端の医療を学びませんか?
北海道科学大学の保健医療学部看護学科では、看護師を指導するCNS(専門看護師)や臨床経験者から医療現場に関する講義を受けられます。
シミュレーションによる教育にも力を入れており、現場さながらのシチュエーションで緊急を要する場面や重症患者に対する医療行為を体験できる点も特徴です。
就職・進学率はなんと100%!
国家試験対策も充実しており、1年生の段階から国家試験に向けて苦手分野を徹底的に対策できるカリキュラムも用意されています。
ほかの学科との交流も盛んで、医療とは違った視点から看護師に必要な知識を得られますよ!