さくらんぼ計算とは?やり方を大学教員が解説!
この記事について
小学校1年生の算数では、十の位に繰り上がる足し算や一の位に繰り下がる計算を学びます。
小学生のころ、「さくらんぼ計算」をしたという人も多いでしょう。
さくらんぼ計算は、実は数学の考え方の基礎を学べる優れた方法なんですよ。
今回は、さくらんぼ計算のやり方やメリット・デメリット、身につくことについて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
このコラムは、私が監修しました!
教授伊澤 毅Izawa Takeshi複素解析幾何学
私は数学、中でも複素数という通常の数より広い範囲の数を用いた幾何学の研究に携わってきました。
情報工学科では応用数理研究室というゼミで、最近話題の人工知能(深層学習)の数学的な仕組みなどに興味を持つ学生さんの卒業研究指導をしています。
今は数学を専門分野とする私ですが、実は高校生の頃まではそれほど算数や数学を面白い教科だとは思っていませんでした。成績もそれなりでしたし(笑)。私が数学を楽しいと思ったのは大学に入学してからです。ここでは語り尽くせませんが、大学で学ぶ数学はとても深く美しいものでした。多くの人々が大学での数学に触れる機会を持ち、小中、高校までの印象とは一味違う世界があることを知ってもらいたいなと思います。
目次
さくらんぼ計算とは?
さくらんぼ計算とは、1つの数字を2つに分解して計算する方法で、小学校1年生が繰り上がりの足し算や繰り下がりの引き算を習う際に登場します。
計算をする際に使われる図がさくらんぼの形に似ていることから「さくらんぼ計算」と呼ばれています。
小学校1年生の1学期では、一けたの足し算や引き算を習いますが、2学期に入ると繰り上がりや繰り下がりの計算を習うことになり、計算につまずきやすくなります。
しかし、さくらんぼ計算のやり方を身につけることで、スムーズに計算ができるだけでなく算数に必要な考え方を育む効果も得られるのです。
さくらんぼ計算がいつから使われるようになったのかは、実は明らかになっていません。
一説では1960年代の算数の教科書に載っていたものの、さくらんぼ計算という名前も出されておらず、そこまで普及もしていませんでした。
文部科学省の学習指導要領では「さくらんぼ計算」としてではありませんが、計算の考え方としてその方法が示され、2010年前後から算数の授業で取り入れられるようになっています。
さくらんぼ計算のやり方を解説!
ここでは、さくらんぼ計算の考え方や計算方法について解説します。
複雑に感じる部分もあるかもしれませんが、解説を参考にしながらぜひチャレンジしてみてくださいね。
さくらんぼ計算の基本的な考え方
例えば、「8+5」を計算する場合「8の後ろに5人並んだ場合、一番後ろの人の名前は?」という質問の答えがそのまま計算の答えとなります。
さくらんぼ計算では、まず10を作る必要があります。
その理由として、日本では「10進法」と呼ばれる仕組みを日常的に使っており、キリの良い数字として10が用いられているからです。
基本的に数字は「0、1、2、3、4、5、6、7、8、9」の10種類を使っています。
そのため、順番に数を数えた際に9の次の数字がないことから、すでに使った数字を組み合わせ、位を上げて「10」と表すようになりました。
10進法は日本語に置き換えて考えた場合もわかりやすく、漢数字で表すと一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一、十二、十三、十四というふうに、10で位が上がったことが文字や音で把握できます。
さくらんぼ計算のやり方
例えば「8+5」を計算する場合、まず8をキリの良い10にする必要があります。
10にするためには、5を「2と3」に分解して2を8へ渡すことで合わせて10となります。(8+2=10)
5を分解して残った3は、10と合わせて13となり計算が完了します。(10+3=13)
では、3けたになる場合はどうなるの?と思うかもしれませんが、考え方は同じです。
99+1で考えてみると、まず、99は90と9が組み合わさった数字なので、90と9に分けることができます。
分けた9に先に1を足すと、10が作れます。
そうすると、99+1を90+10と考えることができます。
90に10を足そうとすると、90の十の位が9でそれ以上の数字がないため位が上がり、100となります。
0が始まりで、10は一巡した後の0、20は二巡した後の0、…90は9巡した後の0だとすれば、その次の100は10回巡ったあとの0と考えることができますね。
引き算の場合はやや複雑ですが、足し算と同じ考え方で計算が可能です。
例えば「12-6」を計算する場合、12を「10と2」に分解して先に「10-6=4」と計算します。
計算で導き出した4を、分解して残った2と足すことで答えは6と導き出せます。(4+2=6)
さくらんぼ計算では、足し算も引き算もまずは「10のかたまりを作ること」がポイントです。
さくらんぼ計算は必要?
繰り上げや繰り下げの計算に活用できるさくらんぼ計算ですが、本当に必要なのか疑問に感じる人もいるのではないでしょうか。
さくらんぼ計算のメリット・デメリットや身につくスキルなどもお伝えしていきます。
さくらんぼ計算でつまずく人が多いのはなぜ?
さくらんぼ計算は、繰り上がりの足し算や繰り下がりの引き算で用いられるため、仕組みを理解する段階でつまずいてしまうケースもあるでしょう。
10のかたまりを作るための組み合わせを理解した上で、分解するだけでなく、答えを導き出すために合成することも理解しなければなりません。
小学校1年生にとっては複雑に感じやすい仕組みのため、苦手意識を持つお子さんもいるでしょう。
さくらんぼ計算でつまずきやすい人が多い理由として、特に引き算が複雑に感じる点にあります。
引き算ではあるものの、答えを出す際に足し算を使わなければならないため、混乱してしまいがちです。
さくらんぼ計算に苦手意識があれば、おはじきやビー玉などを用いて数字の分だけ動かしてみると理解しやすくなります。
さくらんぼ計算のメリット
さくらんぼ計算を使うことで得られるメリットの一つは、10進法の考え方を身につけられるところです。
10や100を一つのかたまりと考える10進法を小学校1年生の段階で覚えることで、数量の感覚を理解しやすくなるだけでなく、日常生活で計算が必要な場面でも役立ちます。
また、算数のテストでもどのような過程で答えを導き出したかを残す場合でも活用できるため、計算ミスを減らせる点もメリットです。
算数の基礎である「数の三項関係」と呼ばれる、数字の量・字・読みの関係を表すものを習う場面においても、さくらんぼ計算は有効です。
例えば「3」の読み方を「さん」と理解していても「2」と「1」の組み合わせでできていると瞬時に理解できない場合、数の三項関係が十分に理解できていないと判断できます。
さくらんぼ計算を用いると、数の組み合わせを考える場面があるため、自然と数の三項関係を学べるようになります。
一けたの数字であれば指を使って計算する「数え足し」で対応できますが、より複雑な計算になると数え足しでは厳しいでしょう。
そのため、さくらんぼ計算は算数の応用問題にも対応するための考え方を身につけられるのです。
さくらんぼ計算のデメリット
さくらんぼ計算を使うメリットがある一方、デメリットも。
暗算ができる子にとっては、さくらんぼ計算は回りくどく感じてしまい、必要ではないと感じてしまうこともあるでしょう。
また、答えは合っていても、さくらんぼ計算を使わないと減点になってしまうケースもあり、子どものやる気を奪いかねません。
答えは1つであっても、さまざまな計算方法があることを子どもたちに理解させることがやる気アップにもつながります。
さくらんぼ計算の「考え方を知ること」が学習のねらいであるならば、テストでは「さくらんぼ計算で解きましょう」といった指示をきちんと入れるなどの対策も必要でしょう。
さくらんぼ計算を使うことで身につくこと
小学校1年生では、答えが一の位になる足し算や引き算を最初に習います。
その際、先に述べたように指を使って計算する場合や絵を描いて答えを出すことが可能です。
しかし、十の位が出てくる計算や掛け算、割り算になると、指を使っての計算や絵での理解が難しくなります。
応用問題にも対応できるようになるためには、さくらんぼ計算のやり方を学び、頭の中でさくらんぼ計算をイメージできるような状態を作ることが大切です。
また、10のかたまりを作ることがさくらんぼ計算の基本であることを低学年のうちから覚えておくことで、普段の生活でも役立ちます。
覚えるまでは複雑に感じますが、さくらんぼ計算を覚える効果は大きいのです。
さくらんぼ計算は数字を分解して考える計算方法
さくらんぼ計算とは、1つの数字を2つに分解して10のかたまりを作って計算する方法です。
繰り上げの足し算や繰り下げの引き算の際に使われ、算数に必要な考え方を養う効果が期待できます。
さくらんぼ計算は複雑に感じやすいため、覚える際はおはじきやビー玉などを使って10のかたまりを作って考える方法も有効です。
さくらんぼ計算を覚えることで数量の感覚を理解しやすくなるほか、数の三項関係を学べるなどさまざまなメリットがあります。
掛け算や引き算、高学年に進んだ際の算数の授業でも応用できるため、さくらんぼ計算を身につけて楽しみながら算数を学べると良いですね。
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