免疫とは?仕組みや種類、高める方法をわかりやすく解説!
この記事について
コロナ禍を経験し、すっかりなじみのある言葉になった「免疫」。
テレビのニュースや会話に頻繁に登場してはいるものの、どんな仕組みでどんな作用があるかなど具体的にご存じでしょうか。
今回のコラムでは、「免疫とは何か?」をわかりやすく解説します。
健康維持に欠かせない免疫の仕組みや種類をあらためて確認しましょう。
免疫を高める方法などもお伝えしますので、これからの生活でぜひ取り入れてくださいね。
このコラムは、私が監修しました!
教授印藤 智一Indo Tomokazu微生物学 臨床生理学 免疫学
私が免疫に関心を抱いたのは約40年前の学生時代で、まだ不明なことが多かったインターフェロンについての卒業論文を書いたのがきっかけです。少しずつ明らかになっていく免疫に可能性と魅力を感じて、麻疹による免疫抑制の仕組みを学位論文のテーマとして研究し、現在もウイルスに対する免疫の機能について検討をしています。
現在ではウイルス感染症ばかりでなく、がんに対する免疫療法、抗体による感染症予防など、様々な話題に「免疫」のキーワードが語られるようになっています。
できるだけ難しい話は避けて、身近に感じるような話題を通じて免疫の作用などを理解することができれば、皆さんの健康に貢献できると思いますので、このコラムでわかりやすく説明をしていきたいと考えています。
目次
免疫とは? 役割と仕組みを知ろう
免疫とは、ウイルスや細菌など異物から体を守る仕組みのこと。
自分の細胞と異物を見分け、異物(抗原)を取り除こうとする反応を免疫反応といいます。
免疫学では自分の細胞のことを自己(じこ)、自分ではない異物のことを非自己(ひじこ)と呼ばれます。
免疫は具体的には以下のような役割を担っています。
- 体の外から侵入したウイルスや細菌などから体を守る
- 体内の老廃物や変異をした細胞(がん細胞など)を処分・排除する
免疫は外部からのウイルスや細菌から体を守る役割がよく知られていますが、そのほかにも健康維持に重要な役割を担っているのです。
なお、免疫には生まれながらに体に備わっている「自然免疫」と、異物を一度取り込むことで備わる「獲得免疫」の2種類があります。
自然免疫と獲得免疫をわかりやすく解説!
免疫の種類を大きく分けると、「自然免疫」と「獲得免疫」の2つに分かれます。
それぞれについて解説しますね。
自然免疫
自然免疫とは、生まれつき体に備わっている免疫の仕組みです。
免疫細胞が異物である病原体などをいち早く認識し、攻撃・排除します。
ウイルス、寄生虫、細菌への対応のほか、老廃物や変異をした細胞の排除なども自然免疫による作用です。
自然免疫では以下の免疫細胞が働きます
- 好酸球:白血球の一種で寄生虫や細菌を処理する
- 好中球:白血球の一種で処理した細胞を消化し殺菌する
- 単球・マクロファージ:侵入した異物を処理する
- 樹状細胞:異物の侵入をT細胞に伝える
- NK(ナチュラルキラー)細胞:細胞内の異物(ウイルスやがん細胞など)を処理する
獲得免疫
獲得免疫とは、自然免疫で処理しきれなかった異物に対応する免疫システムです。
自然免疫で対応しきれない小さな異物や、すでに細胞に入り込んでしまった異物を取り除く働きがあります。
獲得免疫には一度侵入した異物の情報を記憶できるという特徴があり、この「免疫記憶」により、再び同じ異物が侵入したときにはより早く対処できるようになります。
ワクチンなどはこの免疫記憶の仕組みを活用したものです。
獲得免疫では以下の免疫細胞が働きます。
- B細胞:異物(抗原)に対する抗体を作る
- 形質細胞:B細胞が成熟したもので、抗体を量産し自然免疫の働きを助ける
- ヘルパーT細胞:異常な細胞を発見しほかの免疫細胞へ連絡や指示を出す
- キラーT細胞:ヘルパーT細胞の指示を受けてウイルスに感染した細胞を攻撃する
免疫細胞はどう働く?
体に異物が侵入したとき、以下のような流れで免疫反応が起こります。
- 体内に異物が侵入する
- マクロファージや好中球などが異物(抗原)を攻撃する
- 樹状細胞がヘルパーT細胞へ異物の侵入を伝達する
- ヘルパーT細胞がB細胞に指示を出し、抗体を作らせる
- B細胞が成熟して形質細胞になり、抗体を量産して異物を攻撃する
- NK細胞やキラー細胞が異物を含む細胞を攻撃する
自然免疫と獲得免疫がお互いに作用し合いながら、異物を攻撃し取り除きます。
なお、免疫記憶は獲得記憶だけではなく自然免疫でも起こるといわれています。
自然免疫も記憶した情報が呼び起こされることで免疫が活発化し、異物の侵入に素早く対処しやすくなります。
免疫機能を高める方法
免疫力が高ければ有害なウイルスや細菌などにいち早く対応して、健康維持につながります!
今日からすぐに取り組める免疫力アップの方法をご紹介しますので、毎日の生活にぜひ取り入れてください。
腸内環境を改善する
口から摂取したものは良いものも悪いものも全て腸に運ばれるため、腸には免疫細胞が最も多く集まっていて、免疫に関係する細胞などの半分以上は消化管にあります。
そのため腸内環境を整えることは、免疫細胞を活性化させて免疫力アップにつながるといわれています。
偏食や不規則な食事などの食生活は避け、ヨーグルトやチーズなどの発酵食品、野菜、キノコ、海藻類などの食物繊維などをバランス良く積極的に摂取することをおすすめします。
生活習慣を整える
規則的で栄養バランスの取れた食事、質の良い睡眠、適度な運動などを心がけ、生活習慣を整えることは免疫力アップの基本!
獲得免疫は睡眠中に強化されるともいわれているため、睡眠時間も十分に確保したいものですね。
一方で、精神的または肉体的なストレスはNK細胞などの免疫細胞の働きを妨げます。
実際に疲労やストレスが溜まることで口唇ヘルペスや帯状疱疹などのウイルスによる病気が起こることがあります。
そのためにも適度な運動をしてストレスの発散をすることは、免疫力アップとなりおすすめです。
体温を上げる
免疫細胞が正常に働く体温は36.5~37.1℃程度といわれており、体温が低いと免疫細胞が不活発になってしまいます。
適度な運動や入浴習慣、食生活などで体を温め、適切な体温の維持に努めましょう。
免疫細胞は血液とリンパ液にのって体中を巡って作用しているので、体を温めて血流を促すことも免疫力アップに効果的でしょう。
免疫とはウイルスや細菌などの異物から体を守る仕組み
最近すっかりよく聞く言葉となった「免疫」。
「免疫」をわかりやすく説明すると、体内の異物を検知して処理し、体を守る仕組みのことです。
生まれながらに備わっている自然免疫と、一度異物を取り入れる(学習)ことで備わる獲得免疫があり、その両方がお互いに作用し合いながら異物から体を守っています。
ウイルスや細菌など外部から侵入する異物のほか、老廃物やがん細胞など体内の不要な細胞を処理したりするのも免疫の役割です。
免疫力の維持・向上は、健康維持に重要なポイントの一つ。
腸内環境を整える、生活習慣を整えるといった取り組みで、免疫力アップを目指しましょう。
免疫について、わかりやすく解説する出前授業もあります
北海道科学大学保健医療学部臨床工学科の印藤 智一教授が本記事と同じテーマの「ヒトとウイルスの戦い ~感染に対するヒトの免疫機能や感染予防~」講座を行なっています。
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