タイヤ脱落の原因とは?防ぐための対策もご紹介

テクノロジー2024.05.23

この記事について

タイヤ脱落が原因となった事故について、ニュースで見たことがある方もいるのではないでしょうか?


タイヤが脱落すると、乗員が事故に巻き込まれるだけでなく、外れたタイヤが転がり、歩行者に直撃するなどして大変な事故につながります。
ではなぜ、タイヤが脱落してしまうのでしょうか?


今回はタイヤ脱落の原因や、脱落を防ぐための対策を解説します!

このコラムは、私が監修しました!

北海道科学大学 工学部 機械工学科

准教授北川 浩史Kitagawa Hiroshi機械工学

私の所属する研究室は「エンジンシステム研究室」といいます。エンジン(内燃機関)から排出される有害物質の低減や、軽油(化石燃料)に代わる代替燃料に関する研究を主に進めています。
また、私は自動車整備士の資格も持っているので、企業から持ち込まれる「自動車」に関する案件にも対応しています。その中には、いわゆるエンジンを持たない電気自動車の「電費」に関する研究だったり「自動車のラジコン化」といった研究もあります。
そうかと思えば、学内では「1926年製T型フォード」のプロジェクトメンバーでもあります。約100年前の自動車ですが、学ぶところが多くとても楽しいです。学内に常設展示していますので、ぜひ見に来てください!

車のタイヤ脱落が起こる原因

国土交通省の調査によると、大型車のタイヤの脱落事故は2002年4月~2022年3月末までに1,188件発生しています。
脱落したタイヤが対向車に衝突して、乗っていた人が死亡・負傷したり、歩行者に直撃したりする事故へとつながっています。

タイヤ脱落事故が多いのは、特に11~3月。
冬用タイヤ交換後1カ月以内に多く発生していることがわかっており、冬用タイヤに交換する必要がある寒い地域での事故が必然的に多くなっています。

車のタイヤ脱落が起こる主な原因は?

タイヤが脱落する原因は、「タイヤの部品不備・交換時の作業不備」「タイヤ交換後の整備不足」が有力であると考えられています。

タイヤの部品不備・交換時の作業不備

ホイールやホイールナット・ホイールボルト※にサビやゴミが付着していたり、指定されたホイールナット・ホイールボルトを使っていなかったりなど、タイヤの部品に不備があることで脱落につながる恐れがあります。
※ホイールの固定方法にはハブボルトをホイールナットで固定するナット式と、ホイールボルトで固定するボルト式があり、国産車はナット式、欧州車はボルト式が主流です

また、タイヤを交換する際に、規定の締付トルクで締め付けられていないことも原因の一つです。

タイヤ交換後の整備不足

定期的にホイールナット・ホイールボルトの緩みを確認するための「増し締め※」が行われていないなど、整備が不十分であることも脱落の原因と考えられています。
※増し締め=緩んでいるものを規定トルクに締め直すこと

増し締めについても、規定の締付トルクで行う必要があります。

また、タイヤの脱落は左後輪で起こることが多く、その原因もいくつかあります。

タイヤが脱落しやすい場所は左後輪!その原因は?

左後輪が脱落しやすい原因には、日本の道路の仕組みや車の動く仕組みが関係しています。

まず、道路中央は道路脇に排水するために高くなっていて、両脇は低くなっています。
そのため、左側を通ることの多い日本では、左のタイヤに重心がかかりやすいです。

さらに、右折をする際には加速されることで遠心力が生まれ、左後輪に負荷がかかります。

逆に左折をする際にはゆっくり小さく旋回するため、左後輪がねじれやすく、どちらに曲がっても左後輪へ負荷がかかってしまうことに。

このような条件が重なり、左後輪が脱落しやすいのではといわれています。

車のタイヤ脱落事故を防ぐための対策

タイヤ交換の様子

車のタイヤ脱落事故は、適切な対策を取ることで防ぐことが可能です。

ちなみに、タイヤ交換を自分でせずプロに任せた場合でも、緩んでしまう可能性はあります。
以下でご紹介するポイントをチェックしてみてくださいね。

対策①確実に締め付けられているか確認する

ホイールナット・ホイールボルトが確実に締め付けられているか、専用の工具で確認しましょう。

強く締め付けてしまうと、ホイールナット・ハブボルト・ホイールボルトの破損につながるため注意が必要です。


プリセット型トルクレンチという工具を使うと、規定トルクで締め付けることが可能です。
タイヤ交換後、ある程度の力でホイールナット・ホイールボルトを締めてから確認していきます。
メーカーの規定トルクをプリセット型トルクレンチに設定し、締めたホイールナット・ホイールボルトを順に確認していきます。
燃料タンクのキャップと同様に締めすぎると空回りしてくれますので規定トルクで締め付けることが可能であり、それ以上に締めすぎる心配もありません。

工具が無い場合や、逆に締め付けすぎてしまうかもしれないと心配な場合は、整備工場やタイヤ専門店、ディーラーに依頼するのがおすすめです。

対策②部品の状態を定期的に目視で確認する

ホイールナット・ホイールボルトがサビていたり、緩んでいたり、破損していたりしないか、定期的に目視で確認します。
このとき、ゴミが溜まっていないかも確認し、ゴミがあれば取り除いておきます。

整備をプロに任せた場合も、状態は必ず確認しましょう。

サビがひどかったり、滑らかに回らなかったりするホイールナット・ホイールボルトは交換が必要です。

対策③規定距離を走行したら増し締めを行う

タイヤを交換後、50~100kmほど走るとホイールナット・ホイールボルトが緩みやすくなります。
定期的に走行距離を確認し、増し締めを行いましょう。

対策④運転前に点検をする

運転の前にもホイールナット・ホイールボルトを確認・点検しましょう。

点検項目は次のとおりです。

  • 緩みがないか
  • 亀裂や損傷がないか
  • サビが出ていないか
  • ハブボルトの折れがないか
  • 外れている箇所はないか

ついでにタイヤの空気圧をチェックすると燃費の悪化を防げます。

車のタイヤ脱落の原因を理解して日々の対策で事故を防ごう

車のタイヤ脱落は、冬用タイヤに交換する11~3月に起こりやすいという統計があります。
タイヤ交換後1カ月以内に事故が多く発生しており、主にタイヤの交換時に原因があると考えられています。

タイヤが脱落する原因は「タイヤの部品不備・交換時の作業不備」と「タイヤ交換後の整備不足」が有力。
きちんと交換・整備された状態にすることで、脱落を防ぐことにつながります。

また、左後輪が脱落しやすい原因としては、左側に重心が寄りやすい日本の道路の仕組みや、車が動く際に左側(特に左後輪)に負荷がかかりやすい仕組みなどが関係していると考えられます。

プロにタイヤを交換してもらってもナットの緩みは起きてしまうため、自分で日々確認する方法も知っておきましょう。

北海道科学大学工学部機械工学科で未来を見据えたものづくりを学びませんか?

工学部機械工学科では、最新のマシンを設備し、時代の一歩先を見据えた「モノづくりの精神」を育成します。

必修科目の3分の1が実習系科目になっているので、リアルなものづくりを学べる環境が整っています。
専任教諭の63%が民間企業経験者なので、理論だけにとらわれない、実践的な知識を身に付けることができます。

卒業生はゼミで学んだ専門性を活かし、幅広いものづくりの現場で活躍していますよ!

情報科学部 情報科学科 誕生情報科学部 情報科学科 誕生