臨床工学技士の仕事内容をご紹介!魅力ややりがい、資格の取得方法も
この記事について
病院や診療所などの医療機関にはさまざまな医療機器がありますが、医療機器を管理しているのが「臨床工学技士」です。
しかし、医師や看護師とは違い、臨床工学技士はどのような仕事をしているのかわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、臨床工学技士の仕事内容について詳しく解説します!
臨床工学技士の仕事に対する魅力や資格の取得方法についても紹介するので、ぜひご覧ください。
このコラムは、私が監修しました!
准教授菅原 俊継Toshitsugu Sugawara人間医工学 電気電子工学 プロセス・化学工学
病院には数多くの医療機器があります。皆さんが病院へ行き診察や治療で医療機器を使わないことはほとんどないでしょう。これらの医療機器を操作、保守・点検をしているのが臨床工学技士です。
しかし、皆さんが病院へ行った際に臨床工学技士とお会いすることはほとんどないでしょう。なぜなら、臨床工学技士が活躍している場所が、手術室や人工透析室などがメインだからです。
このように医療機器を介して皆さんをサポートしている大切な医療スタッフの一員です。
私はこのような臨床工学技士が操作・管理する医療機器に関わる研究を行っています。輸液の温度低下の防止策に関する研究、体外循環シミュレータの開発、冷温水層由来の細菌制御に関する研究など、ゼミ生・大学院生とともに研究を行っています。
目次
臨床工学技士とは?
臨床工学技士とは、人工心肺装置や人工呼吸器といった生命維持管理装置などの操作を担当する医療技術者の一つです。
生命維持管理装置の操作だけでなく、医療機器の保守・点検も担当しており、日々の診療に支障が出ないように努めています。
また、生命維持管理装置についての知識やノウハウを持っているのは、臨床工学技士のみです。
臨床工学技士は、英語では「Clinical Engineer」や「Medical Engineer」と呼ばれており、医学のみならず工学に関する専門的な知識も求められます。
1987年に臨床工学技士の国家資格が誕生する以前から、医療機器の発達に伴って専門知識を持つ技術者の必要性が増していました。
1987年に医師会・看護協会・検査技師会・放射線技師会の協力のもと「臨床工学技士法」が成立。
翌年の1988年に施行され、第1回の国家試験が実施されました。
臨床工学技士を養成するための大学や専門学校が設立されるようになったのは、臨床工学技士法が制定されてからです。
現在では「タスクシフト・シェア」と呼ばれる医師の労働時間短縮のために、業務の移管や共同化が進められ、臨床工学技士が医療行為に直接関わるようにシフトされています。
臨床工学技士の仕事内容をチェック!臨床工学技士が働くのはどこ?
臨床工学技士は具体的にどのような仕事を行い、どこで働くのでしょうか?
仕事内容や働く場所についてご紹介します。
臨床工学技士の仕事内容
臨床工学技士の業務は、以下の通りです。
- 人工心肺業務
- 呼吸治療業務
- 血液浄化業務
- 集中治療室業務
- 高気圧酸素業務
- 手術室業務
- 医療機器管理業務
- 心血管カテーテル業務
- ペースメーカー/ICD業務
それぞれの仕事内容について、以下で解説します。
人工心肺業務
心臓の手術では、一時的に心臓を停止して治療を行うケースもあります。
その際に、臨床工学技士が体外循環装置(人工心肺)を操作・管理して心臓や肺の働きを代替します。
一台のみで操作をするわけではなく、場合によっては複数台の機器を操作することも。
機器の操作方法を覚えることはもちろん、点検も担当します。
呼吸治療業務
肺機能の低下で呼吸が十分にできなくなった患者さまに対して人工呼吸器を使用することも、臨床工学技士の仕事です。
呼吸治療業務は、人工呼吸器を使用する際に機器が正常に稼働しているかや、機器そのものに異常がないかの確認、メンテナンスなどを行います。
臨床工学技士は人工呼吸器の回路を把握し、正しい設定条件で患者さまに使用することが求められます。
万が一使用中にトラブルが発生した場合の対応や、別の患者さまへ機器を使用するための準備も臨床工学技士の仕事です。
血液浄化業務
血液浄化業務は、急性腎不全や慢性腎不全の患者さまを対象とした人工透析が主な業務です。
透析開始時は、透析中に十分な血液を確保するために「シャント」への穿刺(せんし:針を刺すこと)も担当します。
「血液透析とは?仕組みや種類、必要性や注意点を簡単に解説!」では、血液透析について詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
集中治療室業務
集中治療室業務は、呼吸や代謝機能の急激な悪化が考えられる患者さまや、心臓や脳の手術をした後など命に関わる状態の患者さまの対応を行う業務です。
臨床工学技士は、人工呼吸器や持続的血液浄化装置といった生命維持管理装置の操作や管理を担当。
使用している生命維持管理装置に不具合が発生した場合の対応も行なっており、生命維持管理装置が稼働している時は患者さまの容体確認なども担当します。
緊急時にすぐに使用できるよう、持続的血液浄化装置やECMO(体外式膜型人工肺)の点検や準備も欠かせません。
高気圧酸素業務
高気圧酸素治療業務は、一酸化炭素中毒や急性心筋梗塞などで血中の酸素濃度が低下した際、酸素濃度を上げるために行われる業務です。
高気圧酸素装置の中で患者さまを安静にし、血中の酸素濃度を上げます。
臨床工学技士は、高気圧酸素装置を使用する前に点検を行い、機器に異常がないかチェックします。
チェック後は医師から指示を受けつつ、機器の条件設定を行い治療を開始。
治療後は機器の点検と清掃を行い、次の使用に備えます。
手術室業務
手術室業務は、手術室に置かれているさまざまな医療機器の操作や管理を担当する業務です。
手術室で使用される機器には、人工心肺装置や生体情報モニタ、電気メスなどがあります。
臨床工学技士は、医療機器が正常に動作しているかチェックを行うほか、トラブルが発生した際に迅速に対応し、手術が円滑に進められるようサポートします。
医療機器管理業務
透析装置や輸液ポンプなど、さまざまな医療機器を問題なく使用できるよう点検・管理を行う業務です。
生体情報モニタやシリンジポンプ(点滴時の薬の投与量をより正確に調整できる医療機器)といった医療機器は、医療機器管理室などでいつでも使用できるよう保管。
医療機器に問題が発生した場合は修理を行い、業務に支障をきたさないように努めています。
心血管カテーテル業務
心血管カテーテル業務は、カテーテルと呼ばれる細い管を足の付け根や腕から挿入し、心臓の冠動脈を撮影。
狭窄(きょうさく)の有無や閉塞箇所の確認などを行います。
検査自体は医師が担当しますが、臨床工学技士は心電図や血圧などの生体情報を確認。
緊急用の除細動器、体外式ペースメーカーなどの準備や操作を行うケースもあります。
ペースメーカー/ICD業務
不整脈の患者さまに対して、ペースメーカーやICD(植え込み型除細動器)などを体内に挿入する手術を行います。
その際、臨床工学技士は使用するペースメーカーのプログラムや体外式ペースメーカーといった機器の管理・操作を担当します。
心臓に植え込むデバイスの確認や手術中のモニタリング、手術後の定期外来におけるメンテナンスも臨床工学技士の仕事です。
臨床工学技士の主な就職先
臨床工学技士の就職先は、9割を超える人が病院や診療所などの医療機関へ就職しています。
臨床工学技士による管理が必要な医療機器は、ほとんどが病院にあることが理由です。
腎臓内科や泌尿器科、透析クリニックなどの診療所で、血液透析業務を中心に従事している人もいます。
医療機関のほかに、臨床工学技士の知識を活かして、医療機器メーカーで営業や開発に携わるケースや、臨床工学技士の養成学校で講師として務める場合もあります。
臨床工学技士の仕事のやりがいや魅力とは?
臨床工学技士は、患者さまの生命に直結する医療機器を操作する立場です。
医師や看護師が必ずしも医療機器に詳しいわけではありません。
医療機器のスペシャリストとして治療をサポートし、医師や看護師とは違った立場で患者を救うことができるといえますね!
透析など、患者さまと話せる業務であれば、患者さまから直接感謝の言葉をいただく機会も多いかもしれません。
医療機器は日々進歩を続けており、常に複雑な操作などを覚え、知識のアップデートが必要です。
しかし、最新の医療機器に触れられる機会が多いため、業務を通して学びの機会が頻繁に得られる点はやりがいにつながるでしょう。
臨床工学技士になるには?どのような人に向いてる?
先述したように、医療機器は進歩を続けているため、最新の医療機器の操作を覚え、医師や看護師に説明する機会もあります。
新しいものに興味を持ちやすく、知識をアップデートすることを苦にしない方に向いています。
「機械を操作することが好き!」「人の役に立ちたい!」と考えている方にとっては特に魅力的な職業でしょう。
また、医療機器を扱うには、機械に関する知識や仕組みを知っていなければなりません。
電気工学や電子工学などを学び、なぜこのような構造となっているかを突き詰めることに興味がある方は力を発揮できるでしょう。
臨床工学技士の資格は、高校卒業後に4年制大学か専門学校に通い、臨床工学技士の国家試験に合格すると取得できます。
看護師や診療放射線技師などの大学や専門学校に通っていた場合、卒業後に1年間専門学校か短期大学に通った後に国家試験の受験が可能です。
臨床工学技士の仕事内容を知って将来の仕事を考えよう
臨床工学技士は、人工心肺装置や人工呼吸器などの生命維持管理装置や、手術などで使用する医療機器の操作や保守を行う医療技術者です。
臨床工学技士の業務は、人工心肺業務や呼吸治療業務など多岐に渡り、医療機器の操作だけでなく時には直接患者さまと接する場合もあります。
就職先のほとんどが医療機関で、少数ですが、医療機器メーカーへ就職したり、教育機関の講師になったりする人もいます。
臨床工学技士になるためには、4年制大学か専門学校へ通った後に臨床工学技士の国家試験を受けて合格する必要があります。
また、看護師や診療放射線技師などの大学や専門学校へ通っていた場合でも、卒業後に1年間専門学校や短期大学へ通うと国家試験を受けられます。
臨床工学技士になるための方法はさまざまあるため、まずは情報収集から進めていきましょう!
「臨床工学技士の仕事について」がわかる講座を行っています。
北海道科学大学の菅原俊継准教授が、今回のコラムと同じテーマである「臨床工学技士の仕事について」という講座を行っています。
「臨床工学技士について概説します。この国家資格ができた経緯、臨床工学技士の仕事内容、臨床工学技士が病院で必要なわけなどを紹介します。」
臨床工学技士の仕事内容などに触れ、命を救うお仕事に興味を持っていただけると嬉しいです。
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