「細菌」「ウイルス」とは?それぞれの違いを解説



この記事について
生活の中で、よく耳にする「細菌」や「ウイルス」という言葉。
風邪やインフルエンザ、食中毒など、私たちの身近にある病気の原因として知られていますね。
しかし、「細菌とウイルスって何が違うの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回は、細菌とウイルスの違いについて、大きさや構造、増殖の仕方など、それぞれの特徴を詳しく解説していきます。
病気の予防や治療のために、これらの違いについて知っておきましょう。
このコラムは、私が監修しました!
教授山田 武宏Yamada Takehiro感染制御・抗菌薬適正使用に関する実務 医療系薬学
私は、2つの大学病院において感染症チーム医療に薬剤師として関わってきました。
医師、看護師、臨床検査技師など他職種の医療スタッフと協力して感染症の拡がりを防ぎ、また感染症治療のために必要な抗菌薬の選択、患者さん個別の抗菌薬投与量の設定・提案を行うなど多岐にわたり、薬剤師の活躍する専門性の範囲は広くなっています。
自身の臨床での経験から、本学においては、より有効かつ安全な感染症薬物療法を目指した研究を展開しています。臨床において問題となっている抗感染症薬の副作用を最小限にとどめ、さらに、現在、世界的に問題となっている薬剤耐性(AMR)を解決すべく、細胞を用いた実験研究や医療機関における抗菌薬の使用実態調査解析、さらには医薬品副作用データベースなどを活用して、新たなエビデンス創出を目指しています。
目次
細菌とは
細菌とは、目に見えないほど小さな微生物の一種です。
細菌は一つの細胞からなる単細胞生物で、細胞壁、細胞膜、DNAなどを持っています。
有害な細菌と有用な細菌
細菌には、人の体内に侵入して病気などを引き起こす有害なものと、体内の環境を整えてくれる有用なものとが存在します。
有害菌として代表的なものは、サルモネラ菌、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌などの食中毒を引き起こすもの。
一方で、皮膚の表面の環境を守る表皮ブドウ球菌、腸内環境を守るビフィズス菌や乳酸菌など、有用な菌も存在します。
人の体内には多くの種類の細菌が存在し、常在細菌として私たちの健康維持に重要な役割を果たしています。
また、納豆菌のように食品の発酵に関わる有用な細菌も存在します。
ウイルスとは
ウイルスは細菌よりもさらに小さな微生物で、単独では生きていけない特徴を持っています。
遺伝情報であるDNAやRNAを持っていますが、細胞のような構造は持っていません。
ウイルスの表面には「スパイク」と呼ばれる突起があり、これを使って人間の細胞に侵入します。
人間の体内に侵入して病気を引き起こすウイルスとしては、インフルエンザウイルスやノロウイルスなどが知られていますね。
そのほかにもさまざまな種類のウイルスが存在し、それぞれが異なる病気を引き起こします。
一般的な風邪症候群の多くは、ウイルス感染が原因といわれています。
インフルエンザについてもっと詳しく知りたい方は、「インフルエンザとは?症状や対処法、予防法を簡単に解説!」もご覧ください。
細菌とウイルスの違いは?

続いて、細菌とウイルスの違いを詳しく見ていきましょう。
大きさの違い
細菌は光学顕微鏡で見ることができる大きさ(約1~10マイクロメートル)です。
一方、ウイルスはさらに小さく、細菌の1/50ほどの大きさといわれ、電子顕微鏡でなければ見ることができません。
例えば、ノロウイルスは直径約30ナノメートル(ナノメートルはマイクロメートルの1000分の1)ほどです。
構造の違い
細菌は、細胞壁や細胞膜を持つ原核細胞です。
一方、ウイルスは細胞構造を持たず、遺伝子がタンパク質の殻に包まれた単純な構造をしています。
増殖方法の違い
細菌は、栄養と水があれば自分で増殖することができます。
これに対し、ウイルスは生きた細胞の中でしか増殖できません。
ほかの生物の細胞に入り込み、その細胞の仕組みを使って自分のコピーをつくらせ、増殖します。
治療法の違い
細菌感染症には、ペニシリンなどの抗菌薬が有効です。
これは、細菌が原核細胞という特徴を持つため、その性質を利用して細菌だけに効く薬を作ることができるからです。
一方、ウイルスには抗菌薬は効果がありません。
ウイルス感染症の場合は、一部のウイルスに効果のある抗ウイルス薬を使用したり、ワクチンで予防したりする必要があります。
細菌やウイルスの感染を防ぐには?
細菌やウイルスの感染経路は以下の3つです。
- 接触(経口)感染:病原体が付いた手で鼻や口を触ったり、汚染された食品を食べたりすることで感染
- 飛沫感染:感染者の咳やくしゃみ、会話での飛沫を通じて感染
- 空気感染:空気中を漂う病原体を吸い込むことで感染
基本的な対策は、手洗いで細菌やウイルスを体内に入れないこと。
付着した細菌やウイルスは、できるだけ早く取り除くことが大切です。
細菌による食中毒は、食材の衛生管理に注意し、肉類は十分に加熱することなどで対策できます。
また、細菌やウイルスに対抗できるように免疫力の高い体づくりも大切。
日頃から栄養バランスの良い食事を心がけたり、十分な睡眠時間を確保したりするようにしましょう。
ストレスを溜めすぎず、適度に発散することも大切です。
細菌とウイルスの違いから感染症の予防や治療の対応を考えよう
細菌とウイルスは、どちらも感染症を引き起こす可能性がある微生物ですが、その性質は大きく異なります。
細菌は単細胞生物で、自分で増殖できる能力を持っています。
一方、ウイルスは細胞構造を持たず、ほかの生物の細胞を利用して増殖します。
どちらも人間の肉眼では見えないほど小さいですが、細菌が約1~10マイクロメートルなのに対し、ウイルスはそれよりもはるかに小さいです。
細菌・ウイルスによる感染症予防には、手洗いなどの基本的な衛生管理で細菌・ウイルスを体内に入れないこと、十分な睡眠、栄養バランスの良い食事などで免疫力を保つことが大切です。
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