血液透析とは?仕組みや種類、必要性や注意点を簡単に解説!
この記事について
末期腎不全に対する治療として、「人工透析」という治療法を聞いたことがありますか?
実は透析は大きく分けて2種類あり、そのうちの1つが血液透析です。今回のコラムでは、血液透析とはどんな治療か簡単に解説。
血液透析の仕組みや種類、透析の際に注意すべき点などをお伝えします。
このコラムは、私が監修しました!
講師相川 武司Aikawa Takeshi人間医工学
一般的な認知度は低いですが、医療職の1つに臨床工学技士があります。
臨床工学技士は生体機能代行装置や治療器の操作、保守点検を行う重要な職種です。
医師や他の医療職と協力し、患者様の治療や検査を行います。
私は、前職では臨床工学技士として血液透析やペースメーカ業務等に携わってきました。
そこで得た知識や経験を基に、私の研究室では、臨床工学に関わる医療機器の研究開発を行っています。
現在は、重症呼吸不全症例や重症心不全症例で使用される体外式膜型人工肺(ECMO)施行中に発生する血栓を初期の段階で自動的に検知する仕組みの研究と、血液透析で超音波診断装置を使用するエコー下穿刺の訓練用シミュレータの開発を行っています。
目次
透析とは?透析が必要な理由もご紹介
透析とは、末期腎不全など正常に機能しなくなった腎臓の働きを人工的に補う治療法です。
体内の血液をろ過して、老廃物や余分な水分を取り除き、血液をきれいにします。
人工透析、透析療法などと呼ぶこともあります。
腎臓は主に以下のような役割を担っています。
- 体内の老廃物や毒素を排せつする
- 体の水分量や電解質のバランスを保つ
- 血圧を適切にコントロールする
- 血液を増やすホルモンを分泌する など
病気によって腎臓が正常に機能しなくなると、本来排出すべき老廃物が体に溜まったり、体の水分量が多くなることで高血圧になったり、ホルモンが分泌されなくなることで貧血になったりなど体の不調につながり、放置すると死に至る可能性も。
このように腎臓の働きが慢性的に悪くなった状態を「慢性腎不全」といいます。
慢性腎不全になると腎機能は回復しないとされ、腎機能を補うために透析治療を受けたり、腎臓移植をしたりする必要があるのです。
慢性腎不全が進行して腎機能が正常の15%以下に低下した「末期腎不全」になると、透析治療が必要になるといわれています。
血液透析とは?簡単に解説!
透析は大きく分けて、「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。
それぞれについて解説しますね。
血液透析
血液透析とは、血液をポンプで一度体外に取り出し、ダイアライザー(透析器)でろ過し、きれいな血液にしてから体内に戻す方法です。
透析専門医のいる医療機関で行われ、1回3~5時間、週2~3回(1~2日おき)程度実施します。
施設へ足を運ぶ回数と拘束時間が長いことが大変な治療ですね。
しかし本来、腎臓は常に休みなく動いている臓器ですから、このくらいの時間が必要なのはしかたのないことなのです。
腹膜透析
腹膜透析とは、自分の体内で腹膜を使って血液をろ過する方法です。
カテーテル(管)を使ってお腹の中に透析液を入れ時間をおくと、腹膜の血管を通して血液中の老廃物や不要な水分が透析液に移行していきます。
老廃物などが透析液に移行して血液のろ過が完了したら、その透析液を体外に排出して透析が完了です。
通院の必要がなく、自宅でできることがメリットですが、透析液の交換は自分で行うことになります。
カテーテルの設置手術や管理も必要です。
また、腹膜透析は基本的に毎日行います。
透析液の交換を4~8時間ごと、1日4回行って24時間連続して透析を行う「CAPD(持続的携行式腹膜透析)」と、装置を使って自動で透析液を交換し寝ている間だけ透析を行う「APD(自動腹膜透析)」があります。
腹膜透析はずっと続けられる治療法ではなく、腎臓機能が衰えてくると血液透析か腎臓移植が必要となります。
血液透析に必要な準備とスケジュール
血液透析の準備として、安全・効率的に血液を取り出す・戻すために血液の出入口を作る手術が必要です。
これは、静脈と動脈をつなぎ合わせて部分的に太い血管にするもので「シャント(バスキュラーアクセス)」と呼ばれます。
通常は利き腕と反対の腕で、手首付近の内側に作ります。
血液透析のスケジュール
血液透析は、1回3~5時間、1~2日おきに週2~3回程度行うのが一般的です。
例えば、以下のようなスケジュールになるでしょう。
- 月:血液透析8:30~13:30
- 火:なし
- 水:血液透析8:30~13:30
- 木:なし
- 金:血液透析8:30~13:30
- 土:なし
- 日:なし
医療機関によっては、休日や夜間の透析にも対応しているケースもあります。
血液透析をするときに患者さまが注意すること
血液透析では、血液中の水分や老廃物の除去、電解質のバランス補正などを急激に行うことになるため、体のバランスが崩れさまざまな症状が現れる「不均衡症候群」を起こすことがあります。
不均衡症候群の症状は、脱力感や吐き気、頭痛、血圧低下、手こむらがえり(足のつり)など。
透析中に具合が悪くなることもあるので、その際は医療スタッフがすぐに対応しなければなりません。
また、水分がたまりすぎている状態で透析を受けると血圧低下を引き起こすこともあるので、体内の水分量を管理する必要があります。
水分量は、医師が設定する目標体重(ドライウェイト)で管理します。
なお、透析中には以下のような合併症も起こりやすいため、治療の際は体調の変化にも気を配る必要があります。
- 高血圧
- 低血圧
- 貧血
- かゆみ
- 心不全
- 感染症
- 脳血管障害
- 骨・関節障害
血液透析とは体内の血液を取り出してろ過し、体内に戻す治療方法
病気などで腎臓が正常に機能しなくなったときに、腎臓の働きを人工的に補うのが透析治療です。
その中でも血液透析とは、体内の血液を一度取り出して透析器に通し、老廃物や余分な水分などを取り除いてきれいな血液にして体内に戻す方法。
血液透析を行うためには、血液を安全に効率よく取り出すための取り出し口「シャント」を腕に設置する手術が必要です。
設備の整った医療機関で行い、1回3~5時間、週に2~3回程度の実施が必要と拘束時間の長い治療です。
自分のお腹に透析液を入れて行う「腹膜透析」は自宅でできる透析ですが、ずっと続けられるものではなく、腎臓の機能が低下してきたら血液透析への切り替えが必要となります。
血液透析は急激に体のバランスが変わるため、透析中に具合が悪くなることがあるので注意が必要です。
また、高血圧や貧血のほか心不全や感染症、脳血管障害などの合併症を起こすこともあります。
血液透析について、わかりやすく解説する出前授業もあります
北海道科学大学保健医療学部臨床工学科の相川 武司講師が本記事に関連するテーマの「血液透析における臨床工学技士の役割」講座を行なっています。
「血液透析が必要となる腎臓病のお話とその治療に関わる医療スタッフについて解説します。」
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