食中毒とは?原因や症状、予防法などを簡単に解説

健康2024.09.02

この記事について

ニュースなどでもよく見かける「食中毒」。
「食べ物が悪くなっていたのかな?」程度に思っている方は要注意です!
食中毒は最悪の場合、命にかかわる大変な被害を引き起こします。


今回は、食中毒の原因や症状、予防法について解説!
正しい知識を持つことで、食中毒の危険を回避することができます。

このコラムは、私が監修しました!

北海道科学大学 薬学部 薬学科

准教授佐藤 恵亮Sato Keisuke衛生系薬学

私は公衆衛生学分野に所属し、衛生薬学に関する講義や実習を担当しています。衛生薬学は、「生を衛る」=「健康を守る」ための学問です。現在、日本人の健康を脅かす病気の筆頭であるがんに関する研究を行っております。
細胞や組織のタンパク質を分解するオートファジーというシステムがあります。オートファジーには細胞や組織の恒常性を維持するための機能が備わっています。このオートファジーを利用して現在使用されている抗がん剤の効果を増大させるために日々研究を行っています。
研究は思い通りにいかないことが多いですが、研究室のメンバーと協力しながら医療の発展に貢献できるように日々奮闘しています。

食中毒とは?簡単に解説!

食中毒とは、食中毒を起こす原因となる細菌やウイルスが付着した食品や、毒キノコやふぐなど有毒な物質が含まれた食品を食べることによって、腹痛や下痢、嘔吐、発熱などの健康被害が起こることです。
腸管出血性大腸菌O157やコレラ、赤痢、ノロウイルスなどは人から人へ感染しますが、食品を介して腹痛や下痢などの症状が発生すると、食中毒として扱います。

食中毒は、食べ物が変質する「腐敗」とは異なるため、原因となる細菌やウイルスが付着していても、味や色、においは変わりません。

食中毒が起こりやすい時期は、細菌によるものは気温が高くなる6~9月、ウイルスによるものは冬に流行しやすいといわれています。

食中毒を引き起こす原因と特徴

食中毒の原因は、細菌、ウイルス、自然毒、化学物質、寄生虫の5つに大きく分けられます。
それぞれ、原因となるものや特徴についてみていきましょう。

細菌

食中毒の原因となる細菌は、土や水の中、ヒトや動物の皮膚、腸の中にも存在します。
食中毒の原因となりやすい細菌について一部をご紹介します。

サルモネラ菌

十分に加熱していない卵・肉・魚などが原因です。

潜伏期間は6~72時間(通常12~24時間)で、主な症状は38~40℃の発熱、吐き気、嘔吐、下痢などがあります。
4~5日で回復することが多いですが、ひどい場合は2週間ほど発熱などの症状が続くことがあります。

予防法は、肉や卵に触れた手や器具は、その都度手洗い・消毒をすることです。
肉や卵は75℃で1分以上加熱し、食品の中心部までしっかり火を通しましょう。

カンピロバクター

十分に加熱されていない肉や、井戸水、生野菜などが原因です。
特に、鶏肉の保菌率が高いといわれています。
家畜のほか犬や猫の腸管内に存在するため、ペットから感染することもあります。

潜伏期間は2~7日(通常35時間)で、主な症状は38~39℃の発熱、倦怠感、腹痛、下痢などがあります。

予防法は、生肉は早めに調理して、十分加熱することです。
生肉を保管する際は、加熱しない食品と一緒にすることは避け、調理中は調理器具の洗浄・消毒を十分にしましょう。

腸炎ビブリオ

生の魚介類が原因です。
海水温が上がる夏は細菌が増殖し、食中毒が発生しやすいといわれています。

潜伏期間は4~28時間(通常10~18時間)で、主な症状は上腹部の激しい腹痛、下痢、37~40℃の激しい発熱、嘔吐などがあります。

予防法は、魚介類を生で食べる場合は水道水を流しながら十分に洗うことや、加熱する場合は中心部まで十分に火を通すことです。

また、生で魚を食べる場合は、4℃以下で保存しできるだけ早く食べます。
調理器具はほかのものとは分け、使用後は洗浄と消毒を確実に行いましょう。

黄色ブドウ球菌

ヒトの皮膚、鼻や口の中にいる菌です。
ヒトの健康状態にかかわらず、喉や鼻の中、毛髪などからも検出されるなど、生活環境に広く分布しているのが特徴です。
おにぎりや仕出し弁当、生菓子、調理パンなどが食中毒の原因になりやすいといわれています。

潜伏期間は1~6時間(通常3時間)で、主な症状は吐き気や激しい嘔吐、腹痛、下痢などがあります。

予防法としては、手指に傷などがある場合は調理をしないことや、調理中は帽子やマスクを着用すること、調理後の食品は10℃以下で保存して菌の増殖を抑えること、おにぎりなど温かい食品は冷めてから包装することなどがあります。

ウェルシュ菌

ヒトや動物の糞便や土壌、下水などの自然環境に広く分布している菌です。
耐熱性の細菌で、一度に大量に煮込むカレーやシチューなどが食中毒の原因になりやすいです。

潜伏期間は6~18時間(通常12時間)で、主な症状には下痢や腹痛があります。

予防法は、食事を作り置きせずに、調理後はすぐに食べきること、やむを得ず保存する場合は、冷ましたあとに冷蔵庫で保管します。
すぐに冷めるよう、小分けして冷却するのも有効です。

食べる前には再加熱を十分に行います。

腸管性出血大腸菌(O157、O111など)

牛など家畜の腸管に存在して、糞便が食品や水を汚染して感染するとされています。
感染した人の便を介してほかの人に感染することもあります。

潜伏期間は4~9日で、主な症状は水様性の下痢からの血便、腹痛などの出血性大腸炎です。
重症の場合は亡くなってしまうこともあります。

予防法は、食品は75℃で1分以上加熱し、食品の中心部まで十分に火を通すこと。
調理器具は十分に洗浄して熱湯消毒することなどがあります。
また、井戸水など水道水以外の水を使う場合は必ず消毒をしましょう。

ウイルス

ウイルスは特定の生物の細胞内でのみ増殖します。

ノロウイルス

主にヒトの小腸で増殖するウイルスで、食品に付着しても食品の中では増殖はしません。
ウイルスが付着した食品を食べて感染するほか、感染者の嘔吐物や便を介して感染することもあります。
原因となる食品は、牡蠣などの二枚貝や、生菓子、サラダ、サンドイッチなどの非加熱食品が多いです。

潜伏期間は24~48時間で、主な症状は激しい水様便による下痢、嘔吐、腹痛、38℃程度の発熱などがあります。

予防法は、食品は85~90℃以上で90秒以上しっかり加熱することです。
また、調理前はしっかり手指の洗浄・消毒を行い、下痢や風邪の症状がある場合は調理をしないなどの対策も有効です。

自然毒

自然毒とは、動植物の体内に存在する毒成分です。

ソラニン、チャコニン

ジャガイモの芽や皮の特に緑色になった部分に多量に含まれるもので、未成熟のジャガイモにも多量に含まれます。

潜伏期間は20分~数時間で、主な症状は腹痛、嘔吐、下痢、めまいなどがあります。

予防法は、ジャガイモの芽はしっかり取り除くこと、皮は厚めにむくことです。
ジャガイモは冷暗所に保管して日光に当てないようにし、緑色になった部分は取り除きます。

キノコ毒

植物による食中毒の多くが、毒を持つキノコを食べたことによるとされています。

潜伏期間は10分~6時間以上で、主な症状は嘔吐、腹痛、発汗、幻覚、麻痺など。
最悪の場合は亡くなることがあります。

予防法は、野生のキノコを自己判断で食べないこと。
キノコは外見だけでは毒性を判断できないため、知らないキノコは食べない、知っているキノコでも必ず加熱するといったことが大切です。

フグ毒

青酸カリの1,000倍に匹敵するといわれるほど強い毒で、ふぐの種類・部位・季節によって毒の強さは異なります。

潜伏期間は20分~1時間で、主な症状は唇や舌のしびれ、頭痛、吐き気、歩行困難、言語障害、呼吸困難などで、重症の場合は亡くなることがあります。

予防法は、ふぐの素人調理を避けることです。

化学物質

食品に本来含まれていない有害な化学物質を摂取することによって発生する食中毒です。

ヒスタミン

ヒスタミンが含まれる食品を食べることによって、アレルギーのような症状が出ます。
鮮度の落ちたサバやサンマ、イワシなどの青魚で増殖することが多いです。

潜伏期間は5分~1時間で、主な症状は顔が赤くなる、じんましん、頭痛、発熱などです。

予防法は、原因となりやすい青魚を食べる場合は、できるだけ新鮮なものを食べることです。
蓄積されたヒスタミンは加熱しても分解されないため、加熱して食べる魚であっても早めに調理するか、冷蔵・冷凍保存するなどして低温管理を徹底することが重要です。

寄生虫

動物の体内に食中毒の原因となる寄生虫がいることがあります。

アニサキス

アニサキスの幼虫が寄生している魚介を生食することによって、ヒトの胃壁や腸壁に約2~3cmの幼虫が食い込むことで激しい腹痛を引き起こします。

潜伏期間は食後数時間で、主な症状は激しい腹痛、嘔吐があり、じんましんなどのアレルギー反応が出ることもあります。

予防法は、魚を食べる際は-20℃で24時間以上または-18℃で48時間以上冷凍する、または60℃で1分以上加熱してアニサキスを死滅させてから食べることです。
イカやアジ、サバ、カツオなど、アニサキスの寄生が多いといわれる魚介類の生食は特に注意が必要です。

なお、冷凍または加熱でアニサキスが死滅しても、アレルギー対策には効果はありません。
アニサキスアレルギーの対策は、アニサキスに感染した魚介類を食べないことしかありません。

食中毒の予防法

手を洗う様子

食中毒の予防法の基本は、汚染させない、細菌を増やさない、細菌やウイルスを加熱して死滅させることの3つです。

この3つの予防法では防げないものもありますが、この3つを守ることで食中毒のリスクを軽減することができます。

汚染させない

調理器具や手指の衛生管理を徹底し、食品を細菌やウイルスに汚染させないように注意しましょう。

調理前の手洗いはしっかり行い、調理器具は洗浄・消毒します。
生肉を扱う箸やトングと、食べるときの箸は使い分けるなどして、細菌を移さないようにします。

細菌を増やさない

細菌は調理途中で食品に付着し、温かい部屋に長時間置くことで増殖し、食中毒を引き起こしてしまいます。

調理後は早めに食べる、すぐに食べない食品は冷蔵または冷凍で適切に保存するなどの対策を徹底しましょう。

細菌やウイルスを加熱して死滅させる

細菌やウイルスは熱に弱いものが多いため、中心部までしっかりと加熱しましょう。
75℃で1分以上の加熱が基本ですが、ノロウイルス対策には85~90℃で90秒以上の加熱が有効です。

食中毒とは細菌やウイルスによって引き起こされる健康被害のこと

食中毒とは、食中毒を起こす原因となる細菌やウイルスが付着した食品や、毒キノコやふぐなど有毒物質が含まれた食品を食べることによって引き起こされる健康被害のこと。
腹痛や下痢、嘔吐、発熱などの症状が起こり、重症の場合は亡くなってしまうこともあります。

食中毒の原因は、私たちの身近に存在する細菌やウイルスがほとんど。
調理法や保存方法が悪いことで食中毒を引き起こしてしまうことが多いため、しっかりと対策をすることでリスクを軽減できます。

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