COOPERATION

研究紹介

研究・産学連携

新たに加わったプログラム細胞死機構 フェロトーシスのがん治療への応用

桜井 光一 教授

フェロトーシスは、新たに認められた非アポトーシス性プログラム細胞死である。治療が困難な悪性腫瘍へのフェロトーシスとアポトーシス誘導剤の併用療法が検討されているが、その詳細は明らかではない。私は、アポトーシス感受性ラットインスリノーマINS-1細胞株を用いて、新たな治療法の開発を研究している。アポトーシス誘導剤カンプトテシンとフェロトーシス誘導剤RSL3は、それぞれ単独で用量依存的に細胞死を誘導するが、併用処理では相加的または相乗的な効果が認められない。アポトーシス発現は、フェロトーシス誘導剤の添加により消失する。一方、フェロトーシス誘導剤はフェロトーシス発現に関与する細胞内脂質過酸化および活性酸素種の増加、ならび細胞内遊離鉄レベルの増加に有意な影響を与えなかった。鉄キレート剤および抗酸化剤はフェロトーシスを阻害したが、共処理による細胞毒性は保護しなかった。一方、外因性添加有機脂質ラジカルはアポトーシス阻害した。これらの結果から、細胞内過酸化物の生成がアポトーシス細胞死を抑制し、アポトーシスとフェロトーシスががん細胞内で同時進行しないことを明らかにした。今後、癌治療における異なった経路のプログラム細胞死の共存させる方法を開発したい。

桜井 光一 教授

  • 学位/博士(薬学)
  • 研究分野/生命科学;細胞生物学、悪性腫瘍学
  • 研究テーマ/アポトーシス執行に影響を及ぼすフェロトーシス誘導因子