COOPERATION

研究紹介

研究・産学連携

いつでも、誰でも、どこにでも、気軽に、安全で、安心して利用可能な交通の実現を目指す研究

井田 直人 准教授土木工学

私たちが暮らしている街を人間の身体に例えると、「交通」は血液の流れといえます。血液が人体の隅々まで巡ることではじめて人が生きていられる様に、交通が私たちの暮らす街の中、都市と都市、そして国と国を互いに結びつけることで、街(社会)は成り立っています。

例えば、道路(ここでは舗装された道路だけではなく、けもの道の様な道路も含む)が全く存在しない世界を想像して下さい。たちまち家から外出できなくなってしまいます。いや、家を建てるための大工さんも来られないし、資材も届かないので、もはや家すら建てられません。私たちの暮らしに必要不可欠なものや便利なものの多くは、交通なくしては生産することも、皆さんの手元に届けることも、使い終わった廃棄物を回収することもできません。災害や事故が起こったときに助けが必要となっても、救助に向かうことすらできないのです。

この様に私たちの暮らしにはなくてはならない交通ですが、今、多くの危機に直面しています。身近な交通サービスをサスティナブル(持続可能)なものとするために、そして誰しもが安全・安心に地域で生活することができる交通を実現するために研究をしています。

運転免許返納後の高齢者の社会的活動を支える交通に関する研究

高齢者が運転する自動車による交通事故のニュースが社会問題になっていますが、高齢者に免許返納を促すだけでは解決になりません。免許返納した高齢者の生活や社会活動を可能とするマイカー以外の「足」が確保できていなければ、免許返納制度は絵に描いた餅になってしまいます。また、人は高齢になればなるほど、自らのライフスタイルを急に変化させることが困難になってくるといわれています。

そこで、運転免許を返納しようと考えている高齢者にとって必要となる交通サービスとはどの様なものか? それはどの様なかたちで実現できるのか? について研究しています。

野生動物との衝突事故(ロードキル)を防止するための運転支援システム構築に関する研究

近年、北海道では、エゾシカの急増に伴って、エゾシカと走行中の自動車が衝突する交通事故が急激に増加しています。他にもエゾヒグマが高速道路を含む道路空間に姿を現すことも、決して珍しいことではなくなってきています。大型獣だけではなく、小型哺乳類や鳥類との衝突事故も多数発生しています。

事故多発地点などでは重点的に対策(野生動物侵入を防止するフェンスの設置・野生動物が道路を安全に横断できる様にするためのトンネルや橋の設置など)されています。しかし、基本的には自動車を運転するドライバーの「注意力」に頼っているのが現状です。

そこで、野生動物との衝突事故(ロードキル)を防止するための仕組みづくりについて研究しています。

貨物輸送に着目した鉄道ネットワークの再評価に関する研究

鉄道利用の利点は、比較的小さなエネルギーで、一度に大量の旅客(人)や貨物(物資)を運べる点にあります。地球環境対策の観点からは、例えば貨物輸送の場合、1台の輸送量が小さなトラック輸送から一度に大量に輸送できる鉄道や船舶の輸送へと変えていく「モーダルシフト」が推奨されています。

ところが、人口減少やアフターコロナのライフスタイル変化などにより鉄道旅客の利用者数は大きく減少しています。いま私たちの生活に身近な鉄道は存続の危機に直面しています。既に、運賃の値上げや便数の減少、路線廃止など、その影響を目の当たりにしているのではないでしょうか。現在の旅客を主体とした鉄道の運営はとても厳しい状況に陥っています。

一方で、トラック輸送の担い手不足により長距離陸上貨物輸送に支障が出てきていることが、今日の大きな課題となっています。既に、新幹線を含む列車の一区画を使った荷物輸送を行う「貨客混載」の取り組みが全国各地に広まってきています。さらに、一部のトラック輸送を貨物列車へ置き換える動きも出てきています。

そこで、貨物輸送の観点から鉄道網のあり方を現代の価値観と照らし合わせて再評価し、それを持続可能なものとするための仕組みを検討するために研究をしています。

井田 直人 准教授

  • 学位/博士(工学)
  • 研究分野/土木計画学、交通計画
  • 研究テーマ/運転免許返納後の高齢者の社会的活動を支える交通に関する研究、野生動物との衝突事故(ロードキル)を防止するための運転支援システム構築に関する研究、貨物輸送に着目した鉄道ネットワークの再評価に関する研究