持続可能な開発目標(SDGs)の達成に資する有機合成を基盤とする創薬
![](https://assets.hus.ac.jp/cooperation/assets/2023/images/e3e60a067ab058ecaf75099c236b1d7ef4185201.jpg)
医薬品、化粧品、農薬、機能性材料などに代表される精密化学製品(ファインケミカル)の製造は、我が国の最も重要な産業の一つです。しかし、価格競争激化の影響を受けて、近年、その世界シェアを落としています。また、持続可能な開発目標(SDGs)への対応が遅れてしまえば、取引先や投資家から敬遠され、さらに国際競争力に影を落としかねません。
ところで私は、前例のない、四つのキラルカルボキシラート配位子のうち、一つだけが異なる配位子をもつ混合配位子型Rh(Ⅱ)錯体を創製し、ステップエコノミー・アトムエコノミーに資するC-H挿入反応に応用することで、90%を超える不斉収率を達成しています(図1)。
また、混合配位子型Rh(Ⅱ)錯体がキラル配位子を一つだけ選択的に修飾することが可能であることに着目し、これまで困難とされていた複数のキラル配位子をもつ触媒の不溶性ソフトマテリアルへの固定化に成功しました(図2)。この固定化法は、ろ過などの簡単な操作による錯体触媒の回収・再利用を可能とする“環境にやさしい科学”であり、近年、当該領域における有力な手法の一つとなっています。
![](https://assets.hus.ac.jp/cooperation/assets/2023/images/92efb3ee38a70ed4336374c6a7bebd0d03b5b310.png)
![](https://assets.hus.ac.jp/cooperation/assets/2023/images/13ed7d5b9e7f2ec6a3e01bc90ec3dd813425cff3.png)
さらに最近、上記の固定化触媒をカラムの一端から連続的に基質を投入し、他端から生成物を得る“フロー法”に応用することで、省エネルギー化と操作性・安全性を向上する次世代合成技術を実現しました(図3)。
![](https://assets.hus.ac.jp/cooperation/assets/2023/images/1f96a4309908bde50511df2bd16251ed992c82c4.png)
現在、理論計算と実験化学の協奏により、連続する多段階フロー合成を「集積化」することで、コストや廃棄物を削減し、ファインケミカルの新しい効率的合成法を生み出すことで、北海道の基幹産業である農業・酪農・畜産に寄与することを目指しています。
坪和 幸司 講師
- 学位/博士(薬系化学・創薬科学)
- 研究分野/グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学、薬系化学および創薬科学、有機合成化学